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別に物が床に散らばっているとかそういうことではないが、掃除を途中で突然止めたみたいに物が無かったり隅に寄せられていたり。
今まさに何かをしていたという感じがするが、その何かをしていたであろう彼女の姿が見えないのが更に謎だ。
「あ、祐さんお帰りなさい!」
玄関扉が勢いよく開かれた音がしたので振り返ると、ちょうど息を切らした杏子がリビングに入って来たところだった。
そのまま彼女は僕には目もくれずに二階へと慌ただしく駆け登って行ってしまい、残されたのは話しかけるタイミングを完璧に失った僕だけ。
仕方なく僕も二階に上がると彼女の部屋から物音がしたため、入り口からそっと顔を覗かせて声をかける。
「どうかしたの?」
ベッドの毛布を引っ剥がしていた杏子はこちらへと振り返ると、泣きそうな顔をして僕に言った。
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