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言った瞬間から後悔する。マスターについては彼女も触れて欲しくないだろうし……僕はこの不愉快な感情の正体を知っていたから。
「はい! マスターが私に買ってくださったんです!」
でも彼女が今までに見たことが無いくらい、嬉しそうに笑うから。愛しげに橙色のリボンを見つめるから。
「そっか」
僕はこの橙色というやつが大嫌いになってしまった。
「とりあえずリボン洗っておいで」
こくんと頷いて部屋から走り出て行く彼女を見送って、何故あのスペースにリボンが落ちていたのか検証するべく、机が接している壁を軽く押してみる。
すると湿気の影響か、壁はべこっとたわんで机との間に数センチの隙間を作った。
「見つからなかったら……」
彼女は酷く悲しんだろうけれど、僕はもしかしたら……密かに喜んでしまったかもしれない。
そうならなくて良かった。間違いなくそう思うけれど、やっぱり胸のむかつく感じは消えない。
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