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正直また迷惑をかけてしまったと申し訳なさでいっぱいだったが、一刻も早く働いて自立し、祖父に恩返しがしたかった。
一人暮らしは金がかかるから入社してからも家を出ず、毎日家と会社を往復するだけの日々が続いた。
元々人付き合いが苦手で他の社員との交流もあまりしなかった上に、祖父の七光りでやって来た能のない僕が歓迎されるはずもなく。
先輩や同僚、果ては後輩にまで仕事を押し付けられたり露骨に嫌みを言われることも少なくなかったが、それでも働けるなら構わなかった。
家にも帰らない日が続き、段々と祖父と顔を合わせなくなっていった。社内での僕の立ち位置も変わらないまま、入社から4年が経ったある日。
『6月30日、最近体調がおかしい。いざという時のため、身辺整理をしておこうと思う』
この日記の3日後、祖父が倒れた。深夜に僕が家に帰った時はもう、心臓が止まっていた。
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