第3章 僕

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 静かだった家の中が騒がしくなっていった。叔母だと名乗る顔も知らない人物がやって来たり、葬儀の手配をしたり。  ただ忙しいのは嬉しかった。何も考えず体を動かしていれば良かったから。  葬式には会社の人間や祖父の友人など、驚くくらいの人数が集まった。中には泣きながら僕に挨拶してくれる人もいたが、大抵は僕を無視するか形ばかりの挨拶をしてきた。  親戚だという人々の態度から察するに、僕の引き取りは良く思われていなかったようで。  そう思ったらぼろぼろに涙を流している自分と真っ黒な人々の違いが妙におかしく思えてきて、笑ってしまいそうになったのを覚えている。 「ん……?」  祖父の最後の日記を見ていて、違和感を覚えた。この日記を書いてからたった3日の間に、祖父はわざわざこの別荘へ来たのか?  この日記を隠すために? だとしたら、あの幼い僕に対して言った「宝箱」とはこの日記とは関係無かったのか?
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