第3章 僕

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『お前を愛していたからだ。例え養子だとしてもお前は間違い無く雄介と香奈子さんの子で、私たちの孫だ。お前を他へやる気など無かった。お前が成長していく様を、この目で見届けたいと思った』  ……高校の時、両親がいないことをからかわれて喧嘩した。じいちゃん、実はあれ凄く悔しくて悲しかったんだ。 『だがもうそれも出来ないようだ。お前の結婚式を見るまでは……と思っていたが、年というやつに勝てはしない』  みんなが当たり前に貰う両親からの愛情を知らないことが、凄く寂しかったんだ。 『私が逝ってもお前は1人ではないよ、私たち4人から沢山の愛情を受けて育ったのだから』  じいちゃん、やっぱり僕は馬鹿なのかもしれない。 『祐人、生まれてきてくれてありがとう。私たちの元に来てくれてありがとう。辛い時があっても、歯を食いしばって生きていってください。それだけが、お前の祖父の願いです』  どうしてじいちゃんに直接、育ててくれてありがとうって言えなかったんだろう。
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