第1章 別荘

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 先程一階で飲んできた睡眠薬が効いてきたのか、それとも早くも一酸化炭素に侵されたのか。  この際どっちだって構わないが、強制的な眠りというやつはあまり心地よいものじゃないらしい。  無理やり引きずり込まれるような感覚の中、僕の死なんて誰も悲しまないんだろうな、なんて考えた。    *   *   *  しかし残念なことに僕は白昼の光に目蓋の下の視神経をつつかれ、呆気なく目覚めてしまった。  やはり老朽化で部屋の気密性は低くなっていたのだろうかと痛む頭を押さえながら起き上がると、どうも違うらしいことがわかる。  部屋に七輪は影も形も無い上に窓とドアは大きく開かれ、貼っていたガムテープは床に無惨に散らばっている。  さらには何処からか美味しそうな臭いまで漂ってきて、これは明らかに何者かが僕を助け食事まで用意しているということ。
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