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誰だろう、管理人さんだろうか。やはり別荘を開けて欲しいと電話した時に怪しまれてしまっていたのか?
ここで考えていても仕方ないので、少しふらつく体をベッドから降ろして一階へと階段を下りる。
「あ、おはようございます」
リビングに入った途端に僕を迎えた光景は、僕のぼんやりした頭を叩き起こすには充分過ぎる程のもの。
何故ならそこにいたのは老齢の管理人さんではなく、僕が先ほど拾ったマネキンだったからだ。
いや待てどうしてマネキンが動いて喋っている、それにお湯を沸かしてカップ麺を作っているんだ。
「申し訳ありません、その……いけないこととは知っていましたが、少し使わせていただきました」
彼女は困ったように視線を彷徨わせると、入り口に立ったままの僕に見覚えのある使い古された黒い財布を突き出してそう言う。
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