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あまりのことに思考が追い付かないまま僕は無言で僕の財布を受け取り、まじまじと目の前の少女を見つめる。
もしかしてマネキンじゃなかったのか? いや、あんな所で雪に埋もれる人間がどこにいるんだ。
不可解な少女は何を思ったのか、泣きそうな顔をして僕の顔を見つめている。
まずいな、何か言うべきなのだろうがこんな時に上手く働いてくれる口など持ち合わせているはずもなく。
「……カップ麺、食べるの?」
気が付いた時には、そんな間の抜けた質問をしてしまっていた。
少女の沈黙が痛い。顔を見ていられなくて俯くと、淡々とした彼女の声が視界の外から聞こえた。
「私は初期型マイロイドですので、一部の食品以外は対応しておりません」
ああ……なるほどそうか、そうだったのか。彼女はマイロイド――数年前に発売された、金持ちたちの道楽品。
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