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それからというもの麻衣の前によく男性が現われるようになった。通学中や買い物中塾通い中など、本当に様々な場面で出会った。麻衣を見つけると男性は八重歯をだして「お嬢はん」と大きく手を振った。麻衣はそんな彼に興味が沸いてきて、時間があるときにまた座って話をした。 「あなた名前何て言うの?」 「うちは時貞。」 「お仕事はしてないの?」 「しとるよ。売れない自営業やから、あんまりお金ないねん」 そういって時貞は困ったように苦笑いをする。 「お嬢はん“時の使い”はな、言うなれば時間屋さんなんや。」 「時間屋?」 「そう。欲しい時間に見合った代価さえ払えば誰でも時間を買うことができるんや」 「でもそんなの...」 「聞いたことあらへんやろ?時間を買うなんてタブーやから、表沙汰にはでないんや。‥それに時間に見合う代価なんかわかりまっか?」 麻衣は首を横に振る。 「うちも具体的にはわからんけどうちら庶民には手がでぇへんほどのもんやろね」 一つ息をついて時貞は少し考えた表情をする。すると座っていた位置から立ち上がった。 「今日は仕事があるから、このへんでおいとまするわ」 時貞が歩く下駄の音を麻衣はまた静かに聞いた。
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