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初夏の頃、晴れた空の下で一人公園のベンチに腰掛けてうなだれる女子高生、麻衣。その手には以前行われた大学受験模擬試験の結果が今にも落ちそうな力加減で持たれている。麻衣は第一志望の大学の合格ラインに達しておらず、その結果を見てうなだれていた。しばし、がっくりと肩を落として下を向いていたがやがて大きなため息とともに目を開くこともせず空を仰ぐ。 「意外とべっぴんさんやなぁ」 予想外な声がしてぎょっと麻衣が目を開くと鼻が触れそうな距離に男性の顔があり、思わず息をのみ後ろへ重心が移動する。麻衣は驚きが大きいと声はでないものだと改めて感じる。悪気はなかったものの、あまりにも目の前の麻衣が驚くものなので男性もなんだか罰が悪くなり少しでも安心させようと口元を緩ませる。 「えろぉ驚かしてもうたみたいやね。堪忍な。」 男性は一歩後ろに下がり両手を広げて拳銃を向けられた犯人の如く無抵抗の意を表示する。そのような姿を実際にされたのは初めてで麻衣は少しためらい、先ほど男性の発したの西の訛りにも不信感を覚え、改めて恐怖を感じて身をできるだけ腰掛けていたベンチの背もたれに寄せて顔を強ばらせる。
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