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気が付くと、見知らぬ部屋のベッドの上で横になっていた。
「さて、沙希はどこにいるのやら」
何時間かぶりに沙希の名前を口ずさむ。
「うん、つまりこれは夢の中だ」
すぐにこれが夢の中だと僕の頭は告げる。まあ、たいていまったく身に覚えのない場所である場合、大体は夢の中であるため、わざわざ口に出す必要性などないのだけれど。
再度ゆっくりと部屋を見渡す。
まず部屋の角に置いてあるテーブルの上にパソコンが一台。赤、青、黄色などと多種多様な服はハンガーに掛けられたまま床にほったらかし。大きな液晶テレビが壁に平行井に置かれてある。
カーテンを開けて外を眺める。窓から眺めた空は雲一つない青空だった。
どうやら、ごく普通の世界のようだ。個人的には見たこともない巨大な城が登場したり、魔法が使えたりした世界の方が好きなのだが、仕方がない。
僕はドアを開け、とりあえず外に出てみることにした。玄関でサイズの合いそうな靴を履き、鍵を掛けずに家を出ていく。しばらく歩道を歩き続ける。
「さぁーきー!」
と、周りの目線を気にせず大声で叫んでみる。もしかしたら僕は大声で女性を探す変な奴に思われているのかもしれないが(変な奴なのは僕自身も理解している)、そんなことはどうでもいい。
というか、こんなことまで言っておきながら誰も僕のことなんか見ていないし。
ねえねえ、奥さん、あの子ちょっと頭おかしいんじゃない?
などと家の前で世間話をしているおばさんたちの話のネタにされているのかと心配になったけど、こちらを見ていない時点でそれはないなと確信した。
しばらく叫びながら歩いていると、唐突に後ろから何者かに突進された。
「お願いや。そこの変態さん。ウチのこと助けてくれへんか?」
十代半ばくらいの関西弁の女の子が、突進して助けを求めてきた。おそらく関西に住んでいるのだろう。
てかなんだよ、このシチュエーション。
てかなんで、僕が変態だということを知っている!
「とりあえず、深呼吸でもしてみては?」
僕は彼女を落ち着かせるために深呼吸をするように助言した。
「却下です!」
即座に却下された。変態だからなのか。ああ、そうか。変態の言うことなんて聞けないということか。残念だ。
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