721人が本棚に入れています
本棚に追加
「……と言う訳で、明日から夏休みとなる訳だが…………」
黒縁の眼鏡を掛けた白髪混じりの細身で小柄な男が何やら話している。
ここは県立芸間(げいま)高校である。
眼鏡の男は、このクラスの担任であり今は明日からの夏休みについての注意事項を話している。
そんな中、全く話を聞いていない少年が一人だけいた。
話を聞いていないだけならば他にも数人と言わずほぼ全員に近く、真面目に聞いている人はいないだろう。
ピコピコ……ズババン!
何やら騒がしい効果音が聞こえる。
少年の手には携帯ゲーム機が握られていて、画面には戦闘機が映っている。
人が話しているというのにシューティングゲームをしている。
話を聞いてない連中の中でも一味違う態度である。
ピコピコピコ……ドンッ……!!
大きな音と共に画面に映っている戦闘機が爆発した。
テレテレーレー……
悲しげな音が鳴り、画面上には『GAME OVER』という大きな赤文字が浮かび上がっていた。
「ちっ……!! あーあ……ゲームオーバーだぜ」
舌打ちをし、不機嫌そうな少年の名前は羽山太一(はやま たいち)――
一応、この物語の主人公である。
太一は、使っていたゲーム機の電源を切り、退屈そうな顔をして窓の外に見える、メタセコイア(とか聞いた気がする)と言う名前の背の高い大きな木を見る。
現在の時刻は、AM10:55ーー。
最初のコメントを投稿しよう!