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「マニなら知ってるよね。生物系ゴールドのことなんだけどさ」
「ああ、ゴールドハンターがよく狙いにくるやつだな」
ではこいつもゴールドハンターか。ろくな奴じゃないな。
マニは眉をひそめた。
盗賊の件も、あながち間違いではなさそうだ。
希少価値の高いゴールド。専門機関によって原則一人一つの所持と定められ、厳重に管理されている。それを未だ得られずに狩りに明け暮れる者は、無能者か、現状に満足のできない欲深い者だ。
目の前にいるこの男も同類というわけだ。
マニはゴールドハンターを嫌悪(けんお)していた。
「この町に存在しているらしいのは確かだね。私は見た事はないが」
「雑貨屋のおじさんに話は聞いたんだけど、なんとも的を射なくてね」
にこにこと男は言(げん)を継ぐ。
「シーフギルドにもコンタクト取ったけど、口堅くて教えてもらえないんだよ」
マニは言葉を失った。
血の気が引くのと頭に血が上るのと。
それらを同時に感じるなど初めてのことだった。
シーフギルドの存在は治安維持制度を構える町では最大の汚点と言っても過言ではない。
シーフギルドは盗賊たちが組織する、言わば裏社会のネットワーク。
どんな町にも盗賊の一人や二人は存在するが、それが組織化されるのはその町の治安維持官が余程の無能か、もしくはシーフギルドと治安維持官の間に癒着(ゆちゃく)が認められる場合しかない。
性質(たち)が悪い。
マニは平静を装うのにかなり苦労した。目立たないように何度か深く息をする。
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