ついてない夜

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     * * *  別に待ち合わせたわけでもないのだが、ローウェンとケンタウロは十二時きっかりに軽食のとれるカフェで落ち合っていた。  さすがに朝食のような無謀な食べ方はせず、ケンタウロがサンドイッチセット、ローウェンはコーヒーだけを頼む。 「その顔は何か嗅ぎ付けたって顔だな」  先に口をきったのはローウェンだった。朝のような不機嫌そうな顔はもうしていない。 「うーん。まぁ、簡単に言うと嫌な文献見つけたってところかな」  全く嫌そうではない顔でケンタウロが返す。  マニと別れたあと、ケンタウロはもう一度情報を洗い直すため、町立図書館に足を運んでいた。  国家中央図書館と違い、地方の図書館はその地域独自の情報が集まる。  誰が領主としてどの範囲を治めたとか、地域の特産物から出身著名人の名前、その町の地図などはその土地の図書館にしか置かれていない。  そしてその中には、ゴールドに関する情報もごろごろしていたりする。  捜索の基本は聞き込みだが、単なる噂や誇張(こちょう)された情報も多い。それらをふるいに掛けるためにも、文献の調査は有効だ。  そしてその過程で、とんでもない物を見つけてしまうこともある。 「持ってないところを見ると持ち出し禁止だな。そんなに危ない文献か」 「違う違う。そんなに厄介なものじゃなかったんだよ」 「覚えるのにか。中身は厄介なんだろう」  意味ありげに語尾を上げたローウェンに、ケンタウロの目が鋭くなる。口元はいつもどおりの笑みを絶やさずに。 「気付いたんだ。どこで調べたの?」
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