ついてない夜

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「ガキどもに聞いた」  さらりと言うローウェンに、ケンタウロは苦笑した。  ローウェンにガキって言われるなんて、子供たちは夢にも思ってないんだろうな。 「それじゃあ、想像だけでなく確証も得られたわけだ」  ケンタウロがにっこりとほほ笑む。 「ロウの情報がどこまでか分からないから情報公開するとね、昨日の晩に見つけた町外れの屋敷、四年ほど前からヴァルファネス=ウラド氏の持ち物なんだ」  昨晩、二人はターゲットの行動範囲を特定するため、あちこちを動き回っていた。結果、長いこと使われていない屋敷を見つけ、ターゲットにも遭遇し、取り逃がしてしまったわけだが。  ローウェンの瞳が一瞬陰(かげ)る。 「ウラド? 生体術のか」 「そう。知り合い?」  ケンタウロは意外だと言うように眉を上げて見せた。話題の術士はあまり有名どころではなかったはずだ。 「センターパシオの争いの時に一緒になった」  ローウェンは小さく溜め息をついた。 「気味の悪い術をいくつも披露してくれたよ」 「三十年前の魔術戦争だね。そう言えば合成モンスターが初めて戦争に組み入れられたのってセンターパシオだけど、もしかしてウラド氏の術?」  センターパシオの争いは、魔術は神の意向に反するとしたクルクド教会と魔術師との間で起こった争いである。ちなみに戦争期間は八か月。クルクド教会の聖なる地であるセンターパシオを魔術師たちが制圧して終結している。
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