ついてない夜

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「合成モンスターは奴の研究の副産物だな。永遠に衰えない肉体を研究していた際に、肉体の分解と再合成を解明して作ったと言っていた」  それでは奴は目的を達成したのか。  ローウェンはまだ年若かった青年の、狂気に満ちた目を思い出す。あんな目をした人間を何人も見てきたが、ローウェンの知る限り幸福な最期を遂げた者はいない。  もっとも、本人たちは幸福だったかもしれないが。 「分解と再合成。まさに今回のターゲットだね」  物思いに沈むローウェンに、ケンタウロは全く頓着しない。 「ちなみにロウ、ウラド氏は三年前に死んでるから」  サンドイッチを頬張りながらの緊張感のない声に、ローウェンは一瞬硬直した。 「……馬鹿な。あそこにはまだ、居るぞ」 「ここの町、土葬なんだよ」  一見噛み合わない会話が、言葉の裏で噛み合った。 「だから死ぬ一年前に越してきたのか」  永遠に衰えない肉体の研究者が、その果てに見つけた答え。 「さらに言うと、ウラド氏が亡くなった頃と前後して、首筋に噛み跡のある死体が出てる。体じゅうの血液を抜き取られ、何体かは心臓も持ち去られたらしい。ターゲットの噂は、その頃からされ始めたようだね」  ケンタウロはやれやれと頭を振って見せた。気が重い。 「屋敷には合成モンスターの残骸が数多く残されていたそうだよ。中には人の形をしたものもあったようだ。残念だね、ロウ。人が合成したものじゃ、ゴールドとは認定されないよ」 「人が合成したものなら、な」  だが、肉体を変質させる術なら貴重な知識としてゴールドと認定されるだろう。世に出ないよう禁忌として封じられることになるだろうが。 「ロウはどんな情報入手したの。今更内緒はダメだよ。こっちは手の内全部明かしたんだからね」 「全部じゃないだろ」  空になったコーヒーのお代わりをしながらローウェンはにやりと笑って見せた。
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