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「町外れの屋敷には住んでる奴がいる。ただ、使いに『屋敷周辺を』守らせているようだ」
「ちょっと待って」
不自然に強調されたローウェンの言葉に、ケンタウロがあることに気付いて遮った。
「そう、昨日のターゲットの行動範囲とずれるんだ」
昨晩のターゲットは中央通りの辺りで出現し、東に抜けるように逃走を図(はか)った。
件(くだん)の屋敷はやや東寄りにはあるものの、ほぼ北に位置している。屋敷を守る使いなら少し不自然な位置だ。
「他にもいる可能性があるってこと?」
「屋敷に残骸が残ってたってことだからな。複数いてもおかしくない。それに形状も少し違うようだな」
運ばれてきたコーヒーを受け取ると、ローウェンは何も入れずに一口飲んだ。
「使いは羽の生えた人間の形をしてる。屋敷に侵入しようとする者を確認すると攻撃するようだな。ここ数年、あの屋敷に入った者は多くない」
「でも入った人間はいるんだね」
知らず二人は額を寄せ合った。ケンタウロがチラリと周囲を伺う。
「ガキどもが……」
ローウェンは声をひそめた。
「塀の割れ目から潜り込める場所を見つけた。巨木のすぐ近くだ。森の木に遮られて空の使いには見えないって寸法さ」
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