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手の中に残ったのはやけに重い財布。
そのガキは、普段大人でも持ち歩かないような大金を懐に隠していやがった。
俺は思わず振り返った。
色素の薄い金髪に、マリンブルーの瞳。旅の途中なのか薄汚れちゃいるが、育ちの良さそうな顔に質の良さそうな旅装備。
年は十くらいだろう。反応の鈍さからスラム育ちじゃあない。
マントから時々のぞく服だけが、何故か大きめに見える。
その横にはやけにへらへらした貧相(ひんそう)なめがね野郎が付いていた。
ガキの親には若過ぎるし、兄貴にしちゃあ老け過ぎてる。何より、家族にするには色彩も体型も雰囲気も違い過ぎる二人組だ。
金持ちのガキが召使いでも連れて、親のオツカイで旅でもしてるんだろう。
もしかしたら、金持ちの道楽ってやつかもしれない。
ある所にはあるんだからこのくらいの金、俺が貰ってもバチは当たるまいよ。
そうして財布を懐に入れちまったのがまずかったか。
本職である夜の盗みを終えての帰宅途中。大した稼ぎも無かったっていうのに突然火の玉が現れて、俺の左脇腹を直撃しやがった。
地べたに転がって飛んで来た方を見れば、何だか怖い顔をしたオッサンが空中から俺を睨んでて……。
慌てて逃げようとした俺の鼻先に、昼間のめがね野郎がニコニコ笑いながら立っていやがった。
あの……、額に青筋立ってるんですが……。
俺は生まれて初めて神様ってものに祈った。
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