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中央通りを行く間、二人は静かだった。
たまにケンタウロが冷やかし程度に店を覗く以外は余分な動作全て省略するかのような歩き方である。
二人は明らかに町の外へと向かっていた。
商店が連なる中央通りを中心として円状に広がるこの町は、他の田舎町と同じように町の外に森が広がり、さらにその外を外壁が取り囲む構造になっている。
森はあまり発達すると治安が悪くなるという観点から除草などの整備はなされているようだが、広過ぎるためだろう、外壁付近はほとんど手付かずの状態だ。町に住む人々も、日中であろうとあまり近付く様子はない。
朝市が終わった後の中央通り。
準備中の店が多く、人通りもあまり多いとは言えない。
そんな中、何度か後ろを振り返っていたケンタウロが何かを見つけたようだった。だらしなく鼻の下が伸びる。
ローウェンは小さく溜め息をついた。またか。
「ローウェン、俺……」
「良いから行ってこいっ」
一発見舞ってやろうとしたローウェンのこぶしは空振りに終わった。ケンタウロは羽でも生えているかのような軽やかさで、すでに通りの向こう側にいる。
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