ついてない夜

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 ケンタウロが向かった先にはこの町の女性治安維持官。小麦色の肌をした魅力的な美人である。昨日振られたのにまだ懲りていないらしい。  奴の女好きは今に始まった事では無いが……。  それでもうっとうしい、とローウェンは顔をしかめた。新しい町に行く度に道行く女性に声を掛けまくる。節操があまりになさすぎる。  ケンタウロに言わせると、ローウェンと一緒にいると子持ちに見られて成功率が半減するらしいのだが、知った事ではない。  大体、頼みもしないのにどこまでも付いて来るケンタウロが悪い、とローウェンはいつも思う。  女好きは置いて行こうと決めたとき、ローウェンは今日何度目になるか、振り返って辺りを伺った。  首筋がチリチリする。  どうも誰かに見られている気がしてならない。  それは昨日、しばらく情報を集めたあたりから感じ始めていた。  何を仕掛けてくるわけではないが、じっと二人を監視している。気配を消し切れてはいないくせに、慣れているのか尻尾を掴ませない。  ローウェンは気をとられ過ぎて財布をすられるという大失態を演じている。  盗人は潰した。こいつもいずれ引きずりだしてやろう、とローウェンは薄く笑った。  どこのギルドの回し者か、何が目的か、ゆっくり聞き出すのも悪くない。  だが、まずはこの仕事を片付けてからだ。  ローウェンは再び歩き出した。
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