ついてない夜

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 町外れには稀に見るような巨木があり、周囲の植物がまるでそのテリトリーを侵してはならないと思っているかのように、その木の周辺を避けて生えている場所がある。  珍しくもない光景ではあるが、そういった木には、巨大なエネルギーが蓄えられる事がままあるのだ。多くは神木として大切に管理されている。  この巨木も管理こそされていないが、巨大なエネルギーを蓄えていた。まだ誰も気付いていないのかもしれない。  巨木の根元に立ってローウェンは改めて辺りを探ってみた。  監視の気配は先ほどから消えている。この辺りで手を出してくるかと思ったが、なんとずさんな仕事ぶりか。  足下は昨日、ローウェンがしたとおりの状態で保存されていた。  地面に半円を描くように描かれた呪文の数々。――組式(くみしき)――。魔術を行う際に術者を補助するための呪文図。  その用途、術の属性により使われる形、呪文はまちまちであるが、一言でくくればエネルギーの通り道である。  ローウェンは組式を足で崩した。  巨大なエネルギーの柱。その下にエネルギーの通り道となる組式。十分な準備を行いながら、ローウェンはターゲットを取り逃がしていた。  ザッ、ザッ。  苛立ちをぶつけるように荒く、組式を消していく。昨晩の事が思い出される。
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