ついてない夜

8/18
65人が本棚に入れています
本棚に追加
/71ページ
 その夜、ローウェンとケンタウロはターゲットを追っていた。  家々の屋根を飛び移りながら追跡する。    満月に近い月の光は明るい。  その光は、異形の影を家々の屋根に映しだす。視覚による捕捉は簡単だ。  だが、おかしな事に気配が薄かった。暗がりに潜り込まれると見失ってしまう。  そのくせ微かな気配はそこここからして、何度もローウェンとケンタウロは気を散らされた。  小さなモンスターの群れが暗闇でパッと散って姿をくらますようだ。  月の下ではヒラヒラと薄い巨大な布のようにも見える。黒い影になって家々の間を抜けていくこともある。どうにも形が定まらない。  何度か魔法による火炎を浴びせ、雷撃も見舞ったのだが、直撃しても一向に効いた様子がない。こんな相手は初めてだ。  情報屋の話を思いだす。  このノーツに潜むモンスター、どうも正体が掴み切れない。何人ものハンターが挑戦したが、人型なのか獣型なのか、体毛や手足、目鼻の有無、色もはっきりしない。  そのくせ何人もが目撃しており、その時の状況から、数匹が群れているようでもない。  姿を変える新種の生物、新手(あらて)のゴールドかもしれない、と。
/71ページ

最初のコメントを投稿しよう!