ゴールド・クエスト～夜の棲む町～

ついてない夜

　ゴールド。遥か昔、貨幣として重宝された金属の名前だ。

　量が豊富に取れなかったことから、いつしか現在の貨幣がゴールドの代用品として使用されるようになった。
　だがその価値が減るわけもなく、ゴールドが掘り当てられればその地に人が流れ込み、大変な好景気をもたらしてきた。

　ゴールドラッシュ。ゴールドが存在していた時代の、まさに輝かしい恩恵を表す言葉。

　しかし人々の欲望は、その輝かしい存在を溶かしてしまった。

　人々はゴールドを掘り尽くしてしまったうえ、その少ない塊を奪い合うようになる。

　互いのゴールドを奪おうとする戦いが頂点を極めた時、その場に使用された兵器がゴールドを土塊（つちくれ）に変える成分を含んでいた。

　勝者が得たのはおびただしく流された血と、汚れた土の塊。歴史書には人類の歴史上もっとも愚かな戦いとして刻まれている。

　それからというもの、希少価値の高いものに対して｢ゴールド｣の称号が与えられることになった。

　もっとも、奪い合いの種として皮肉を込めてそう呼ぶ者たちも少なくない。学ぶ事を知らない人々がそれらを手に入れるため、醜い争いを未だ続けているからである。

　そしてその夜、ローウェンとケンタウロが追う相手もゴールドである可能性が高かった。

　新種の生物、しかも一般の動物に分類されないモンスターは、生物系のゴールドとして認定される確率が高い。

　ローウェンはゴールドを追う者、ゴールドハンターを生業（なりわい）としていた。