1章 日常/非日常

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チャイム。 学校に着いて10分後。 俺より遅れて教室に来た弥楽に、先に登校したことの文句を言われていると、チャイムが鳴った。 周りのクラスメイト達が慌てて席につく。 ガラガラと教室の扉が開いた。 「……出席とるぞ~」 ゆったりと入ってきた担任の渦栄波屶(カザカエ ハナタ)先生――通称ナタセンがいつも通りダルそうに言う。 「んじゃ、欠席者は手ぇ上げろ」 無理だろ。 そんな言葉が生徒達の脳裏に渦巻く。 「……あ?欠席者はいねぇか。なら――」 「先生、戒堂兄妹がいません」 そう告げたのはこのクラスの学級委員長。 メガネ装備におさげ髪委員長というベッタベタなクラスメイトである。 「戒堂兄妹?どっちもいないのか?」 戒堂兄妹というは、兄の戒堂薙斗(カイドウ ナギト)と妹の戒堂隻那(カイドウ セキナ)という兄妹だ。 兄はサバサバした性格で、妹は誰にでも丁寧という、正反対の双子である。 しかし、どちらもいないとはどういったことだろう。 「理由は聞いているか?」 「隻那ちゃんが風邪をひいて、それが看病していた薙斗君にうつったようです」 ……どんな看病してたんだ……? 「ずっと側で励まし続けていたようです」 なにしてんだ薙斗。 「夜も不安がるだろうと隣で寝たそうです」 シスコンだ……。 シスコンでシスコンでシスコンだ……。 「まぁ妹大好き薙斗君ならそれも本望だろ」 と、ナタセン。 少なくとも、まっとうな大人の発言ではない。 「他に休んでるやつは……いないな。……今日は連絡がある。」 ナタセンは、ダルそうなまま、 「転校生がきた」 と言った。 喧騒。 『転校生!?』 教室が喧騒に包まれる。 もちろん俺は平然としていた。 転校生など歯牙にかけぬように。 『転校生がきた』というより、『転校生が転校してきた』と、いうのが正しいのでは、しかしそれでは『在校生が在校していた』という用い方もできる考え方なので齟齬がある、よって――などと非生産的な思考をしていた。 「ちなみに、女だ」 『おおおぉぉぉっ!』 我がクラスの男共からさらに大きな歓声が沸き、対照的に女子からは嘆息が。
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