1章 日常/非日常

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雑音。 甲高い音が鳴った。 もちろん俺は耳栓をしている。 やはりと言うべきか、クラスメイト全員が耳を塞ぎ、また、頭を抱えていた。 「何すんだよ~!」 「耳痛ーい」 「美少女転校生希望」 「うぅ~」 「天瀬君酷いよ」 「頭がぁ……」 「何してんだか……」 「何だ何だ……?」 何故か挫けず妄言を吐く奴と呆れ顔の幼馴染みが各一名。 さておき。 「……一旦落ち着けお前ら。騒いでたら入ってこれるもんも入ってこれんだろうが」 また騒がしくなるかもしれなかったが、どうやら皆納得したらしい。 「……んじゃ、入ってこい」 ガラガラガラ 戸が開く。 入ってきたのは、背の高い少女。 『……………』 美人だった。 有り体にいって美人というのは、顔の造形に加え、どこか常人にはない特殊なオーラを纏っているもので、この転校生もその例に漏れずに、高嶺の花といった雰囲気であった。 「……はい、名前とか自己紹介とかテキトーにしとけ」 相も変わらずダルすぎるだろ、ナタセン……。 「……響尾櫟(ヒビキオ レキ)です」 儚い。しかし、何故か教室中に響く、凛とした声だった。 「……………」 沈黙。 自己紹介は名前で終了したのか。 「……あ? 終わりか? んじゃあ、そこの空いてる席に座るように」 ナタセンが促す。 「……はい」 転校生――なんと呼べば良いのか分からないので暫定的に響尾さん――は、そのまま静かに歩き、静かに席についた。 「……あ~、連絡は以上だ。ホームルーム終了」 そういうと、ナタセンはサッサと出ていった。 当然の如く、クラス中の視線が響尾さんに集まる。 「……………」 響尾さん、黙して語らず。 なので、誰も話しかけれない。 「……えっと、響尾さん、ちょっと聞いていいかな?」 弥楽がなんとか口火を切る。 「……かまわないけど」 「じゃあ何か好きなものとかある?」 「……読書」 「……………」 「……………」 沈黙再来。 「うんと、それじゃ――」 弥楽の質問は続いたが、結局、響尾さんは当たり障りの無いことしか言わなかった。
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