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雑音。
甲高い音が鳴った。
もちろん俺は耳栓をしている。
やはりと言うべきか、クラスメイト全員が耳を塞ぎ、また、頭を抱えていた。
「何すんだよ~!」
「耳痛ーい」
「美少女転校生希望」
「うぅ~」
「天瀬君酷いよ」
「頭がぁ……」
「何してんだか……」
「何だ何だ……?」
何故か挫けず妄言を吐く奴と呆れ顔の幼馴染みが各一名。
さておき。
「……一旦落ち着けお前ら。騒いでたら入ってこれるもんも入ってこれんだろうが」
また騒がしくなるかもしれなかったが、どうやら皆納得したらしい。
「……んじゃ、入ってこい」
ガラガラガラ
戸が開く。
入ってきたのは、背の高い少女。
『……………』
美人だった。
有り体にいって美人というのは、顔の造形に加え、どこか常人にはない特殊なオーラを纏っているもので、この転校生もその例に漏れずに、高嶺の花といった雰囲気であった。
「……はい、名前とか自己紹介とかテキトーにしとけ」
相も変わらずダルすぎるだろ、ナタセン……。
「……響尾櫟(ヒビキオ レキ)です」
儚い。しかし、何故か教室中に響く、凛とした声だった。
「……………」
沈黙。
自己紹介は名前で終了したのか。
「……あ? 終わりか? んじゃあ、そこの空いてる席に座るように」
ナタセンが促す。
「……はい」
転校生――なんと呼べば良いのか分からないので暫定的に響尾さん――は、そのまま静かに歩き、静かに席についた。
「……あ~、連絡は以上だ。ホームルーム終了」
そういうと、ナタセンはサッサと出ていった。
当然の如く、クラス中の視線が響尾さんに集まる。
「……………」
響尾さん、黙して語らず。
なので、誰も話しかけれない。
「……えっと、響尾さん、ちょっと聞いていいかな?」
弥楽がなんとか口火を切る。
「……かまわないけど」
「じゃあ何か好きなものとかある?」
「……読書」
「……………」
「……………」
沈黙再来。
「うんと、それじゃ――」
弥楽の質問は続いたが、結局、響尾さんは当たり障りの無いことしか言わなかった。
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