1章 日常/非日常

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動揺。 「……………」 驚きを顔に出さないようにして、ゆっくりと答えを選ぶ。 「……いいや」 悪魔。 俺にとってその存在は、信じる信じないという域を越え、信じざるを得ないのだが。 ここでその事を言おうと、益になるとは思えない。 「……そう」 響尾さんは少し微笑んだ。 「ならいいわ」 響尾さんはそう言い、踵を返してそのまま去った。 「……………」 (おい、悪魔) <……何だ?> (お前のことは秘密にしないといけないんだろ?) <そうだ> (もし口を滑らしたら?) <お前の上に岩を滑り落とす> ………。 死ぬって。 <とりあえず契約のことは他言するな> ……こういう会話してるとやっと悪魔の契約の重大さが分かる。 悪魔は悪魔。 <しかし……お前のその呼び方はなんとかならないのか?> ………? <悪魔悪魔って……それは俺がお前を人間人間って呼ぶようなことだぞ?分かってんのか?> ふむ。 <つまり、俺はこう言いたいわけだ> はぁ。 <俺を悪魔と呼ぶな、人間!> やっぱりか!? さっきまで普通に呼んでたくせに! 言うと思った……。 <何だ、反応ないな……> (……一応は律儀に対応しているつもりだが。) <そこは、もっと驚くべきだ> ……例えば? <『バカな!?俺の計算は完璧なはず!』『嘘だ……。嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ!』『なん……だと!?』くらいかな> (俺は一体どんな状況に陥ってんだよ!?) <時は戦国、全ての兵を敵国に送ったが相手は計算外な兵力をもっていて勝てず、味方からも裏切られ、かろうじて逃げ切れたと安堵した時に一番信頼していた部下に背後から刺された大名……的な?> なにその似非時代劇! (俺、裏切られすぎじゃね!?) <それが、お前だ……。紛れもないお前なんだ……> (そ、そうだったのか……って、良い台詞っぽく言って誤魔化すな!) <それは一旦置いて色紙で梱包しておこう> (どこに送る気だ!?) <脳の片隅> こんな会話を脳にとどめておきたくない。
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