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下校。
俺は、悪魔との他愛ない会話をした後、弥楽のいるゲームセンターに行った。
ピロピロピロピロピロ
ゲーム機から出る様々な電子音が俺を出迎える。
「正義!こっちこっち!」
弥楽が大きな声で呼ぶ。
少し恥ずかしい。
<……けっ>
(何だよ)
<この主人公補正野郎が……>
(その言い方止めろ)
<このギャ◯ゲ野郎……>
(悪化した!)
分かってたけど!
<なら文句言うな>
………。
とりあえず、こいつと建設的な会話をするのは諦めよう。
「……?どうしたの?」
「いや……。ちょっとな……」
「ちょっと妄想中?」
「何でそうなる!?」
脳内でも現実でも俺の心が休まることはないのか……。
<御愁傷様>
(お前が言うな!)
「……はぁ……」
「ん?どしたの?」
弥楽が笑顔で聞いてくる。
「いや……何でもない……。」
悪魔のことを話すわけにはいかないので、口を濁す。
……今になって思うのも何だが『悪魔』という存在は煩わしい以上に危ういモノだ。
漠然とした底知れぬ力。
人は分からないモノを恐れる。
だから分かろうとする。
わかりあおうとする。
だが分からない。
なら……?
「目を背けるしかないか……」
小声で呟く。
いや、これはそんな能動的で、前向きなものではない。
呟かないと……言葉にして吐き出さないと、この憂いは晴らせない。
しかし、ならば。
あの転校生は。
不可解な雰囲気ながら、普通に質問には答える、ただの転校生……いや、質問にしか答えなかった……?
俺が悪魔に憑かれた翌日にやって来て俺だけに悪魔のことを問いかけたあの、転校生は。
何なのだろう。
それこそ分からない。
分かりえない。
「正義……?」
弥楽が俺の顔を覗き込むように見た。
「何でもないって」
そう言って誤魔化すために弥楽のやっているゲームを見た。
『ゾンビを撃ち殺そう♪』
………。
緊迫感のカケラもねぇ……。
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