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帰宅。
ちなみにゲームは惨敗だった。
撃ち殺すゾンビというものが、なぜか可愛くデフォルメされた三頭身のキャラだったのだ。
………。
撃ち殺せるか!
ちなみに弥楽は、普通に全てのゾンビに対して躊躇なくヘッドショット。
曰く、『何で撃たないの?ゾンビはゾンビでしょ。見た目で差別しちゃじゃない?』とか。
……やっぱパネェ。
……差別て。
「ただいま~」
「ただいま」
家には誰もいない。
母さんは仕事だ。
「さてと」
宿題でも……
「さぁ!ゲームやろう!」
「まだやんの!?」
言ったころには、既にゲームの電源がいれられ、テレビには有名メーカーのロゴが輝いていた。
早っ。
まぁ、いつもの事だが。
「何言ってるの?当たり前じゃない」
「さも当然のようにいうな」
「え?当然でしょ」
「本気なのかよ!?」
「目の前にゲームがあったらまずやらないといけないでしょ?」
「もはや義務の域か」
この世からゲームが消えたらどうすんだこいつ。
……………。
……むちゃくちゃ勉強して自分で作ろうとするな、多分。
<何処までも貪欲なんだな>
それが、御鞍弥楽だ。
それ以下でも、恐らくそれ以上でもない。
<よく知ってるな>
(当たり前だ)
こんな身近にいる人間のことが分からないほど、俺は馬鹿じゃない。
<じゃあ、取り敢えず馬鹿なんだな>
(違ぇよ!)
<……アホなのか?>
(お前は俺のことどう思ってるんだよ!?)
<残念>
(何が!?)
<痛々しい>
(どこが!?)
<忌々しい>
(お前がな!)
「………ねぇ」
突然弥楽が言った。
とはいっても、視線は目まぐるしく変わるテレビ画面に向いたままだ。
「どうしたの?何か正義、今日変だよ」
「……っ、そうか?」
「そうだよ。何かよく硬直してるし、何もないのに表情コロコロ変わるし」
<完全に変人だな>
(お前のせいだろ!)
「……ほら、今も!」
「いや……何でも無いって」
俺は誤魔化すために自分の部屋に行こうと――
ガッ プツッ
「……あ」
ゲーム機のコードに引っ掛かった。
当然の如く、そのケーブルが抜けた。
光輝いていた画面が、黒一色になった。
あと最たる変化はひとつ。
「……正義!」
修羅と化した弥楽だ。
……その怒りを放たれた後、俺は生きていられるだろうか。
俺は信じてもいない神に祈ってみた。
悪魔がいるなら神もいるのかと考えながら。
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