プロローグ

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いきなりだが、俺は悪魔と契約した。 悪魔。 契約。 その胡散臭い言葉に対し、良い反応をする人は稀だろう。 かくゆう俺も、そういった話題には眉をひそめる人間だった。 ある日に突然、悪魔と出会うまでは。 突然も突然に。 ……例えば、『袖振り合うも多生の縁』ということばがある。 しかし、それはあくまでも(ダジャレではない)人間同士限定だと思っていた俺が間違いだったのか。 悪魔に遭遇したことが間違いだったのか。 ……というか、悪魔の存在自体が世界にとって間違いなのだろうが。 そんなわけで、悪魔は俺の後ろにいる。 居る。 憑いて居る。 しかし、この異常な状況に慣れてしまった自分もここにいる。 俺も十分異常だろうか。 『我思う、故に我あり』という格言に倣えば、まだ俺は普通の部類だろう。 そう、思っている。 そう、思いたい。 まず大前提として、俺は自ら望んで契約したわけではないのだが。 人の気持ちを考えず、 人の意思を感じず、 人の志を省みず。 自分勝手に身勝手に。 名の通り、悪の権化。 悪魔。 俺は悪魔の何てことない言葉遊びに引っ掛かり、契約を結ばされたのだ。 契約の代価(俺が手にいれたものなど無いのだが)が俗説通りの魂では無いのが救いだった。 その代価とは。 『正義』の意味を教えることだった。
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