1章 日常/非日常

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朝。 起床。 幼馴染み。 と、言えば分かるだろうか。 などと、天瀬正義(アマセ セイギ)16歳(高1)――つまり俺は、いもしない聞き手に問いかけてみる。 もちろん意味はない。 この世で、最もと言っていいほどだ。 だが、別にそれを妨害するものはない。 当たり前だが。 「正義!起きて!」 大声で叫んでいるのは御鞍弥楽(ミクラ ミラク)という、江戸時代の偉人っぽい名前の女。 というか幼馴染み。 現在、幼馴染みに起こしてもらっている。 <それなんてギャルゲ?> (知るか。) 天からの声に一応答える。 確かに王道中の王道、わかりやすいものではあるが。 弥楽はそんなゲームに出現するキャラではない。 「いい加減起きないとエロ本見つけちゃうよ?」 ……というか、誰もいて欲しくないだろこんなヒロイン。 女子がエロ本ゆーなや。 仕方なく暖かい楽園(布団)から抜け出す。 別にエロ本探されたら困るからではない。 <嘘つけ> (俺はそんな本など所持していない……!) <……映像派?> (違うわ!何で食い下がってくんだよ!?) (そんなに俺を陥れたいのか!?) ……と、天からの声と会話していると、弥楽が業を煮やしたように言った。 「ほらほら、起きたら着替えて!」 はいはい。 俺は服を脱……って待て。 「お前は何をしている?」 「写真撮影。」 うん。 実に迷いの無い晴れやかな笑みだった。 俺はそれに微笑み返し、携帯を構える幼馴染みの首を掴み、部屋から引きずり出した。 ……何か一日の始めに一番疲れている気がする。 いや、気がするのではなく実際に疲れた。 今日一日を生き抜く活力を削られた俺は、ダラダラと着替え始めた。
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