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朝食。
制服に着替えた俺は、階段を降りて食卓に向かった。
「おはよう正義」
「……おはよう」
「正義!早く早く!」
いたのは弥楽と母さん。
テンションの高い弥楽とは対称的に、落ち着いた母さん。
何故この二人は仲が良いのだろうか。
「ところで弥楽ちゃん、息子は相変わらず変態だった?」
「残念ながら確認できませんでした」
……………。
<噛み合い過ぎだろ……>
(ほっといてくれ……)
「それにしても毎朝悪いわね弥楽ちゃん」
「いえいえ、三年もしてれば慣れますよ」
そう、弥楽が俺を起こしに来るようになったのは、一緒に住み始めてからだ。
<……ちょっと待て>
(……なんだよ?)
<一緒に住んでんの?>
(ああ。)
<……………>
……………?
<それなんてエ◯ゲ?>
(ランクアップした!?)
ちなみにそんな関係ではない。
弥楽の親とうちの親は、俺たちの生まれる前から交流があった。
三年前、弥楽の両親が失踪するまで。
弥楽は親しい親戚がいなかったために、一人で生きようとしていた。
そこで、母さんが「うちに来なさい」と言ったのだ。
同年代の男がいるというのに弥楽は気にしなかった。
幼馴染みといえば色恋沙汰に結びつける人間が多いが、実際には兄弟姉妹と変わらない。
そんなわけで、弥楽は俺の部屋の隣に部屋を持った。
もちろん鍵つき。
<……それなんて>
(くどいな、おい!)
俺は天の声をスルーすることにした。
「……?どしたの正義。固まっちゃって」
「いや、ちょっとな……」
「毒電波でも受信してた?」
「お前は俺のこと何だと思ってんだ!?」
「とても残念な人だと」
「即答かよ!?」
「訂正。とてつもなく残念な人だと」
「何故に上方修正!?」
「下を見ろって?私には上しか見えないの!」
「多分キャラ固まってないだろ、それ」
「あなたが何と言おうと私は諦めない!」
「……………」
何世代か前のスポーツ漫画のキャラだろうか。
「二人とも、早く食べないと遅れるわよ。痴話喧嘩もほどほどにしなさい」
「ちっ、痴話喧嘩なんてそんな……」
「おい弥楽。わざとらしく顔を赤らめるな」
「私たちはただの幼馴染みで……」
「まだ続けるか!?」
その似非ラブコメ。
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