1章 日常/非日常

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回想。 ◯◯◯◯◯ 昨日のことだ。 帰り道で俺は、黒コートの男に会った。 背丈は二メートルほどの大男。不自然にノッペリとした顔で、死んだような目で、俺を見ていた。 その不自然さに。 その死んだような目に。 俺は、呑み込まれた。 そして男は、凛とした声で唐突にこう言った。 <俺と契約しないか> 「……契約?」 怪しいにもほどがある。 俺は唐突に我に返り、目の前の男を見据えた。 <願いを叶えてやろう> 新手の宗教か何かだろうか、と俺は身構えた。 「……願いなんてありません」 下手に答えたらまずい。 <無いのか?> 「……無いですよ」 あなたに消えてほしい、というのはありだろうか。 すると、男は少し考える素振りをし、 <何も叶えないで欲しいか?> と訊いてきた。 話すことを諦めたと俺は思ってしまい、そして、失敗した。 「はい。じゃあ――」 さようなら、というのを男が遮った。 <契約成立だ> 「……はい?」 <望み通り、何も叶えないでやろう> 気付けば。 男は体をグニャリ、とねじ曲げ、グチャグチャかき混ぜ、球状になっていた。 <さあ、代価を払ってもらおう> そんな声が、頭の中に響き渡った。 ◯◯◯◯◯
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