1章 日常/非日常

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結論。 屁理屈にもほどがある。 『願いを叶えないこと』を叶える。 ……いやいや矛盾してる、矛盾してるって。 <ふん……世の中に矛盾しないものなどないのだよ……> (訳知り顔でいうな。) まぁ別に悪魔の顔が見えているわけではない(そもそも顔があるのかも分からない)のだが。 俺は苦言を呈しておく。 <人間は常に矛盾を孕んで生きている……だからこそ美しいと思わないか?> (お前悪魔だろ。) <酷い!悪魔だからって差別するのか!> (いや、人間と悪魔を同視する方が酷いだろ。) <もういい!私もう知らない!> (無理して高い声だすな気持ち悪い。) まぁ声といっても脳裏に響くよく分からないものだが。 <………> 反応がない。どうやらこれで会話は終了のようだ。 大方の予想通り、悪魔は身勝手だった。 悪魔という未知数の存在とこれから関わっていく。 悪魔という未知数の存在にこれから巻き込まれる。 オカルト、心霊、超常現象。 魔法、霊能、超能力。 天使、悪魔、神。 ありとあらゆる異常なモノを信じなかった(信じる機会が無かったともいえる)自分としては、未だに実感がない。 神に祈り。 仏に願い。 キリストの誕生日には浮かれ。 年の始めには賽銭箱に小銭を投げ込む。 俗にいう無神論者、しかし信じないのに何かにすがる……つまりは典型的な日本人であった自分には、そういったモノに耐性はなかった。 しかし、俺はそんな異常な状況に、違和感を感じなくなっている。 おかしなモノなんてこの世に溢れているし、それは曖昧なまま風化し、日常という果てしない果てのないどうしようもない自然に、侵食される。 日常とは、異常を食い潰し、人々に世界の当たり前を押し付ける。 だから、この遭遇は偶然に、俺に降りかかっただけの、世界の一面。 異常な偶然ではなく、正常な必然だともいえる。 こんなの間違っている、何で俺が、と頭を抱えても、世界にとっては間違いではなく正しいことなのだろう。 まぁ、とりあえず。 契約の代価を見つけよう。 只今午前八時二五分。 俺は歩く速度を上げながら学校に向かう。
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