1章 日常/非日常

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教室。 俺が通う七史野学園(中高一貫)は、一般的な学力と部活動実績を誇る(?)、学園である。 私立高校なのだが、学費が物凄く安い。 七志野学園はとある実業家(超金持ち)が娯楽でつくったため、利益を求めていない。 というか、学園のある七志野市自体特異な場所なのだ。 二十年前は山奥にあるただの七つの市であった。 その頃の好景気にのせられ、町起こしとして共同開発したゴルフ場やら何やらの娯楽ランドは、景気が落ち込むと共に廃園になった。 そこに目を着けた実業家は、その七つの市をを安値で(実際は面倒な手続きやら根回しやらがあったのだろうが)買い取り、一つの大都市としたのだ。 テレビで生放送された彼の演説によると、「自分だけの都市をつくりたかった」とのことだ。 『七つの志を持ち、野を駆け抜けん』なる奇怪な標語の元に、ここは七志野市と名付けられた。 そして、七つの市の区切りはそのまま区の境界線となった。 そして、実業家の好きな施設(ゲームセンターからアパートまで)が、ただひたすらに建てられたため、人口以外のものはたった三年で他の都市に劣らない、おかしな市に。 そしてそれらの施設を、実業家は捨て値で提供したという。 結果、日本全国から人や企業などがなだれ込み、七志野市の人口は日本有数のものにまでなった。 日を追うごとに市は活性化し、実業家が七志野市に本拠地を構える企業には積極的に投資したために、様々な技術が大きく発展した。 その融資の条件はその技術を市外に持ち出さないこと。 理由は『自分の街で作られたものは自分の街で消費すべき』なんだとか。 そんな条件を目に見える形で表しているのが、七志野市をぐるりと囲む壁だ。 もちろん外に出られないわけではなく、ただ出るのには特殊な届け出が必要になった。 それにより、七志野市は冷戦時のベルリンのように異質な市になった。 誰も文句は言わかった。 事業家の力……財力権力その他諸々を証明するように。 企業には、技術は三年のタイムラグをもって持ち出し可能にしたらしい。 それでも利益を生むのだろう。 七志野学園は市の真ん中にある一区の中心にある。 普通の学校だ。 変わったことといえば、生徒会の人間が変態だとか、風紀委員が不良だとか、そもそも普通な人間が在学することが普通でないくらいだ。 〈……………〉 脳裏に違和感。 取り敢えず無視。
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