第一章

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「おーい、加奈!そろそろ行くぞ!」 「あっ待って!今行くっ!」 健人に呼ばれて急いで加奈は駆け寄る。 そして皆で廃墟ビルへと足を踏み入れた。 立ち入り禁止の場所なのはわかっていたが、何か悪いことをするのは少し罪悪感を感じてもなんだかワクワクするものだ。 廃墟ビルの中は真っ暗で壊れてヒビ割れた窓ガラスから少し薄い光が入ってくるくらいだ。 ヒュルルと少しだけ冷たく不気味な風を背筋に感じた。 「ヨッシャ、まず懐中電灯をつけてっと。」 健人は楽しそうに懐中電灯の電源をつけた。 パアッと光が溢れた。 それを見て他の皆も懐中電灯の電源を入れた。 懐中電灯の光がたくさんついて辺りは少し明るくなった。 光はビクビクしながら足をガクガクさせて健人の後ろをついていくように歩いていた。 あたしはそれがおかしく少し笑いながら、廃墟ビルの奥へと足を進めていく。 廃墟ビルの奥に壊れて動かないエレベーターと、もっと奥には階段が見えた。 「階段から行くかー。」 「えー桃華疲れちゃうよぉ。」 怜子が言うと桃華が駄々をこねた。 「はぁ?桃華、アンタねー、廃墟ビルで肝試しなんだからしょうがないでしょー。疲れるとか言うなら置いていくよ?」 「あー嫌だー!置いていかないでよぉ!あー加奈、一緒に行こっ。」 隣まで来た加奈に桃華が言ったので、加奈は桃華と一緒に階段を登ることにした。 階段は錆びており、足が乗る度にミシミシと壊れそうな音がした。 脆そうな階段を1段1段登っていくとやっと2階にたどり着いた。 「けっこう広いな。」 関心するように真が行った。 2階は1階よりもなんだか不気味に見えた。 カタカタと壊れた窓ガラスが音を立てた。 「ねぇーもう桃華怖いっ。健人たち帰ろうよぉ。」 桃華は泣きそうな声を出して言った。 「まだ来たばっかじゃん。桃華は怖がり過ぎなんだよ。」 健人はハハッと笑うとまた奥に足を進めていく。 「もーやだよー。」 「まあまあ、頑張ろうよ。桃華。」 不満をもらす桃華をなだめる加奈。 でもなんかここ1階より怖いかも…。 桃華じゃないけど、なんか嫌な感じがする。 気のせいかもしれないけど。
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