一界目 荒れ地と空

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ふと、この空間の雰囲気が変わる。 変わるというかなんというか。 風が、大地のざわめきが、まるで空間からえぐり取られたかのように、消滅した。 そしてこの異変に、今まで怒鳴っていた奴らや、一人コントをしていた奏が黙る。 「始まる……」 ノエルがなにか呟いた瞬間ーー。 「うぃぃぃぃぃぃぃぃいぃいぃぃぃッ!! てめぇら元気にしてたかごるぁぁぁッ!!」 耳を塞ぎたくなるような大音量の声が、異様にダンディな声がこの空間に響き渡り。 そして、声のした方向、すなわち浮いている不可思議なテレビの方を見ると、一体の熊のぬいぐるみがテレビに座り、煙草を吸っていた。 黒いキュートなおめめ。 目許まで吊り上がったワイルドなお口にギザギザのいかす牙。 二つの丸い天使のような白い耳。 そして母性本能をくすぐるふかふかしてそうな顔から下。 完璧に、凶暴そうな熊のぬいぐるみがそこにいた。
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