青年の日常

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―――― ガチャ 「・・・おっと、おはようございまーす。」 彼が扉を開けた部屋は台所だが、既に先客がいたようだ。年の功が感じられる、優しそうな老婆である。 「んあぁ、おはよう、聡(さとる)さん。」 ちょうど調理中で手が離せないのか、顔をこちらに向けずに彼女は応えた。 「手伝いますよ。」 聡と呼ばれた青年は調理を手伝おうとするのだが・・・ 「いいや、ええってよ。今日は“うちの番”やさかえ。」 「でも、せっかく受験も無事終わって余裕も出てきたし・・・・・・あと、しばらく作ってなかったから腕が落ちてないかなぁ・・・っと思って。」 「あははは、そうかえ。そやけど悪いなぁ。もう終わてもたで。」 「えっ?そうですか・・・」 老婆に言われて台所の上を見ると、既に味噌汁や焼き魚、菜っ葉の胡麻和え、煮物等の朝食が揃っていた。 つまるところ、聡は調理の手伝いをすることは出来なかったようだ。 「もう少し俺みたいな若い人に頼ってもいいんですよ。」 「おきにな。そやかて人に尽くしたい歳っちゅうんは何時やかて変わらへんのやで。」 「はあ、さいですか・・・。」 「まあ、そやったら、ここんおかずとか皿によそて持ってってもらおか。」 「任せてください房(ふさ)さん。」 老婆、房さん【龍上房子(りゅうがみふさこ)】に頼まれ、聡は張り切って仕事に取り掛かった。
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