別れ

3/4
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/99ページ
メンヘラーの自助的グループP-POPS。“表現活動で社会参加”という主旨の集まりで、引きこもり経験者や精神を病んだ者たちが集い、月いちくらいでコンサートなどのイベントを開催している。 13匹の猫と暮らすド変態腐女子・猫姫とはそこで知り合った。出会ってほどなくして、お互いを気がね無く罵りあうくらいには仲良くなり、3年ほどになるだろうか。 メンヘラーや引きこもりの自助グループと聞くと、なんて言うかこう善意と良心に満ち溢れた集団を想像するかもしれないが、所詮は人間の集まりでしかない。 会社や学校など他の組織と同じく、いじめもあれば派閥めいたグループ同士の反目もある。20名足らずの小さな集まりだから、むしろ大組織よりキツいと言えるかもしれない。猫姫とオレを最初に結びつけたのは、そうした利害関係だった。 “お嬢と執事”ごっこをしたり、嫌なメンバーの悪口を並べあったり、一緒に出かけて飯を食ったり、仲間とバーベキューしたり…。夜中にいきなり電話かかってきて、何時間も付き合わされたりもした。 性格破綻しまくりのこいつと、何故ずっと付き合えたのか? それはオレが、誰かから必要とされたかったからにちがいない。深夜の電話で奴の、タレントや掛かり付けの医師やアニメキャラへの妄想片想いの話、あるいはBLの話、ヤなヤツの悪口などに何時間も付き合わされるのは、話は大して面白くなかったが、“オレじゃなきゃダメなんだよな”と思える貴重な時間だった。 今回のことも、まぁ心の病気から出たことでもあるのだろうけれども、だからって容赦しちゃダメだろ?言いたいこと言い合える仲でなければ、友人…いや、知人ですらいたくない。 その強烈なこだわりが、何人もの人間を斥ける結果を生んできたが、この姿勢は今後もまったく変えるつもりはない。 …確かに、奴が言ったように、オレは働き始めてから変わったにちがいない。そして、必要とされたいと思える他の誰かと出会った。 互いに、自分を必要としてくれる相手を必要とするから、オレらは奇妙な関係を続けてこれたのだ。
/99ページ

最初のコメントを投稿しよう!