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「もしかしたら、俺もこれを望んでたのかもしれないな」
彼女は聞いてないフリして、頬杖をついて、窓の外を見た。
「あっ……」
すると、小さく声を漏らした。
俺もふと時計を見ると、11時になろうとしていた。
そして、静寂に包まれた街に騒音が響いた。
空からヘリが降りてきて、校庭に着陸しているのが見えた。
この場所がばれてたことより、さっきの会話を聞かれていなかったか、どうかが気になる。
少し恥ずかしくなってきた。
「そろそろ時間みたいね」
「そうだな」
もうすぐ、世界の終わりが訪れる。
俺は立ち上がり、マフラーを解き、彼女の後ろに回り、それを巻いてやった。
「手、震えてるよ」
「わかってる」
怖いさ。
俺だって、ただの高校生なんだから。
「私はここから、アンタの勇姿を見てるから」
「そうしてくれ」
彼女は震える俺の手を、ギュッと握った。
彼女の手もまた、震えていたような気がして、俺は握り返した。
「まぁ、なるようになるよ。きっと、な?」
彼女は俺を笑って言った。
「アンタらしいよ」
そして、彼女は巻かれたマフラーに顔をうずめた。
どうも、不安やプレッシャーが拭えない。
俺は、ふと口を開いた。
「なぁ、もし明日、世界が終わらなかったらさ、またここで会えないか?」
何を考えているのだろうと、自分でも思った。
でも、不思議な気分だった。
彼女は振り返って、俺に言った。
「うん。ここで待ってる」
ふたりとも、不安は全くなかったと思う。
少なくとも、俺はやるべきことがわかってきた。
世界の終わり。
全人類の未来。
そんなもの、俺には手に負えない。
でも、たったひとつの、幼馴染との約束は守ろう。
「じゃあ、そうしたらついでに、コーヒー牛乳おごってくれよ」
「お金があったら、考えといてあげる」
彼女に笑われたけど、まぁ、いいか。
「あ、やばい。迎えが来てたの忘れてた」
「そうじゃん。早く行きなよ」
「おう」
俺は教室の出口で振り返った。
お互いに、いう言葉は決まっていた。
また、明日。
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