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俺は今、“救世主”と呼ばれている。
理由はよくわからない。
ただ、世界が終わろうとしている中で、その世界に選ばれた、ということしか言えない。
なぜ世界が終わるのか。
なぜ俺が選ばれたのか。
何もわからないというのに、終末という存在を前にして、俺に何ができるというのか。
“救世主”と呼ばれる前は、俺は何の変哲もない、ただの高校生だった。
仲のいい幼馴染もいた。
家族がいて、友達もいた。
そんな平凡な俺が、明日という世界を背負わされても、ただ押し潰されないよう、もがくことしかできない。
いや、それすらできるか、正直のところわからない。
周りからは、微かな期待をされ、知り合いからは好機の目で見られ、もううんざりだ。
今や、電車や飛行機はもちろん、車やバイクすら走っていない。
明日終わるという世界を前にし、誰も外に出てこなくなったこの街は、空虚だけを残して静かに佇んでいた。
気温が日に日に落ちていき、今はまるで冬のようだった。
マフラーを巻いて、意味もなく制服を着て、そんな街中を歩く俺は、一体どこへ向かっているのだろう?
ただ導かれるように彷徨い、星をたまに見上げ、ため息をつく。
息が白い。
ふと立ち止まった。
目の前には、静かな校舎が建っていた。
ただ俺は、どこかへ行きたかったのかもしれない。
明日、世界が終わる。
そんなの、俺にはどうしようもなかった。
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