世界の終わり、そして約束

5/5
前へ
/7ページ
次へ
「もしかしたら、俺もこれを望んでたのかもしれないな」 彼女は聞いてないフリして、頬杖をついて、窓の外を見た。 「あっ……」 すると、小さく声を漏らした。 俺もふと時計を見ると、11時になろうとしていた。 そして、静寂に包まれた街に騒音が響いた。 空からヘリが降りてきて、校庭に着陸しているのが見えた。 この場所がばれてたことより、さっきの会話を聞かれていなかったか、どうかが気になる。 少し恥ずかしくなってきた。 「そろそろ時間みたいね」 「そうだな」 もうすぐ、世界の終わりが訪れる。 俺は立ち上がり、マフラーを解き、彼女の後ろに回り、それを巻いてやった。 「手、震えてるよ」 「わかってる」 怖いさ。 俺だって、ただの高校生なんだから。 「私はここから、アンタの勇姿を見てるから」 「そうしてくれ」 彼女は震える俺の手を、ギュッと握った。 彼女の手もまた、震えていたような気がして、俺は握り返した。 「まぁ、なるようになるよ。きっと、な?」 彼女は俺を笑って言った。 「アンタらしいよ」 そして、彼女は巻かれたマフラーに顔をうずめた。 どうも、不安やプレッシャーが拭えない。 俺は、ふと口を開いた。 「なぁ、もし明日、世界が終わらなかったらさ、またここで会えないか?」 何を考えているのだろうと、自分でも思った。 でも、不思議な気分だった。 彼女は振り返って、俺に言った。 「うん。ここで待ってる」 ふたりとも、不安は全くなかったと思う。 少なくとも、俺はやるべきことがわかってきた。 世界の終わり。 全人類の未来。 そんなもの、俺には手に負えない。 でも、たったひとつの、幼馴染との約束は守ろう。 「じゃあ、そうしたらついでに、コーヒー牛乳おごってくれよ」 「お金があったら、考えといてあげる」 彼女に笑われたけど、まぁ、いいか。 「あ、やばい。迎えが来てたの忘れてた」 「そうじゃん。早く行きなよ」 「おう」 俺は教室の出口で振り返った。 お互いに、いう言葉は決まっていた。 また、明日。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

17人が本棚に入れています
本棚に追加