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第一章 神の光
眼を閉じてごらん。そこに、何が見える?
何も見えないだろう。そこには一面の闇が広がっているはずだ。さっきまで、そこにあった筈の、椅子や、机や窓、あらゆる物が、何もかも消えている。それは゛無の世界″だ。
そう、遥か太古の昔、世界には何も存在していなかった。そこには、深く暗い闇だけが、ただ静かに漂っていたのだ。
しかしある時、無の世界に、時と戒律を司る神アシュラウルがどこからともなくやってきて、右手で闇を動かした。すると、それは靄となった。
アシュラウルは、そこに四つの種を蒔いた。それは彼が息吹を吹きかけると供に、大きく成長していった。種は次第に言語を解し、意思を持つようになっていった。その頃になると、靄は固まり、丸い球体となって宙にうかんでいた。
神は、それぞれの種に名をつけた。猛々しく荒ぶる種にサラマンダー。生真面目でどっしりと構えた種にノーム。無邪気で飄々とした種にジン。柔らかで無垢な種に、ウィンディーネ。そして彼等をかいして゛精霊″と呼んだ。
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