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俺は自分の叫び声で目覚めた。
「ああ、またあんときの夢か……」
必ずこの夢を見た後は言葉では言い表せないくらいの苦しみと切なさ、虚脱感に襲われる。
はあ、とため息をつきつつ体を起こし、リビングに向かう。もううまそうな朝食の匂いがしていた。
ソファに身を投げ出す。その音に気づいたのか、声が返ってきた。
「ああ、おはよう。またあの夢見たのか?」
うん、と小さくうなずいて浅く腰掛け直した。
俺は大崎大翔(おおさきはると)、16歳。生まれながらにして魔術師としての能力とその最高位「ガリアの紋章」を得た。基本的に魔術師は専門外の術式は上手く扱えないが、俺は何だって魔術でできる。いわゆる常人でない存在。
そのせいで俺はとある事件を起こし、親にも捨てられ、今は見ず知らずの人たちと暮らしている。
俺はずっと思っていた。こんな能力なんていらないと。でも、本当にそうなのか。最近はそう思うようになってきた。
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