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―――――――――――
『―…さん…』
――声…?
「お客さん!終点ですよ!」
「ん…」
目を開けると、光に目が眩んだ。
バスの運転手は、バックミラー越しに最後尾の私を迷惑そうに睨んでいた。
―そうだ。私、家を出てきたんだ…
バスを降りると、当たりは街灯もまばらな集落のはずれだった。
すっかり陽もくれて閑散としている。
ザァアア…
ザザァアア…
真っ暗だけれど、道路の向こうは海らしいことは解った。
背後には、人を拒むような森が崖を覆っている。
心細さはなかった。
小屋のようなバス停、その古いベンチに腰かけた。
『コートくらい着てくればよかった』
冬真っ盛りに制服と旅行鞄一つの自分を呪う。
―まぁいいか。どーせ死んだらそれまででいいし。
白い溜め息をつくと、重量化した体重にベンチがきしんだ。
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