1章―お試しアプリ

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――――――――――― 『―…さん…』 ――声…? 「お客さん!終点ですよ!」 「ん…」 目を開けると、光に目が眩んだ。 バスの運転手は、バックミラー越しに最後尾の私を迷惑そうに睨んでいた。 ―そうだ。私、家を出てきたんだ… バスを降りると、当たりは街灯もまばらな集落のはずれだった。 すっかり陽もくれて閑散としている。 ザァアア… ザザァアア… 真っ暗だけれど、道路の向こうは海らしいことは解った。 背後には、人を拒むような森が崖を覆っている。 心細さはなかった。 小屋のようなバス停、その古いベンチに腰かけた。 『コートくらい着てくればよかった』 冬真っ盛りに制服と旅行鞄一つの自分を呪う。 ―まぁいいか。どーせ死んだらそれまででいいし。 白い溜め息をつくと、重量化した体重にベンチがきしんだ。
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