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「……」
机に頬杖を突き、ぼぉっと蒼空を眺める。退屈なHR、なんとなく遠く聞こえる先生の声に、少女――陽向空烏(ヒナタ アオ)は小さな溜め息を吐いた。
「消えちゃえばいいのに……」
タイミングよくチャイムがなり、先生が教室から出て行く。それとほぼ同時に、後ろの席から呆れたような声が聞こえた。
「空烏、あんたねぇ……」
「聞こえた?」
笑いながら振り向く空烏に、友人は苦笑してこたえる。
「ばっちり。やめなよ~、そりゃあ先生話長いし、つまんないかもしんないけどさ?」
額を小突かれ、空烏は友人へと首を振って否定を示した。
「先生じゃなくて……この現実が」
「は?」
「どっか遠くにいってみたいなぁって……誰も私を知らない世界、私も何も知らない真っ白な世界に」
「何それ、御伽噺の世界とか?」
「そうだね」
冗談を吐く友人に、空烏も笑って返す。
そう。
現実には起こり得ないことだと思ったからこそ、軽く。
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