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「お父さん……」
呟くと、青白くなったその頬に触れる。
『お帰り、空烏』
頭の中、そう言って笑う父親の姿に、空烏は切なく笑うとそっと手を離した。
「ん……?」
視線を逸らしたその時、空烏は父親の手の中にある、あるものを見つける。
赤茶色の革表紙、綺麗な装飾の施された、それは一冊の分厚い本だった。
「何、これ……?」
空烏は思わずそれを父親の手から抜き取ると、じっと見つめた。
気のせいだろうか、先程はこんなものなかったきがするのだ……
「日記、かなぁ?」
題名のない表紙、鍵の付いている様子から、そう呟く。
瞬間。
「きゃっ……!?」
一瞬、ほんの一瞬なのだが、本が意志を持ったかのように、空烏の手の中でドクン、と脈打った。驚いて、思わず取り落とす。床に落ちた衝撃で、鍵は意図も簡単に割れてしまった。
「……」
開かれた状態で落ちた中は、予想通り何もかかれてはいなかった。
だが、次の瞬間。
「……っ!?」
誰かが書き綴っているかのように、突如一文の文字が白紙に浮かび上がってきた。
『シンデレラ』
そう、脳が確認した時。
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