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藤城さんはちょっと驚いた表情を浮かべ、満面の笑顔で私を見つめた。
「ありがとうございます。…あやめさんのお陰で自信が持てましたよ。」
その時、店の奥からパティシエの格好をした男性が二人出て、ニヤつきながら近付いて来た。
「お~い!フジ~!女の子ナンパしてねぇで、仕事しろよ~ι」
「君、一丁目の喫茶店の子だよねぇ?何?フジの彼女?」
私が返事に困っていると、藤城さんは私を庇うように立ってくれた。
「違いますよ!!お客様に変な事言わないで下さい。」
私は何も言えずに、チョコレートの箱をレジに持って行くと、足早にその場を立ち去った。
(……『違いますよ!!』…か。何か改めて言われると、ちょっと凹むなぁ…ι)
私が喫茶店に着くと、マスターは新聞を畳み、紅茶を入れてくれた。
「お使いご苦労様♪ユウには会え……どうしたの?あやめちゃんι…何か今にも泣きそうな顔して…ι……ユウ居なかった?…それとも…ユウに何か言われた?ι」
あたふたと慌てるマスターに、私は首を横に振った。
「…私…私…」
言葉にならない思いは一筋の涙になり、ゆっくりと零れ落ちていった。
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