Rendezvous 14. Februar

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毎日のように来るお客さん。 いつも2時ちょっと前に来て、珈琲を頼む。 その人が『常連さん』から、『好きな人』になるのに時間は掛からなかった…。 あれは半年前の事。 カウンター席の端に黒い折り畳み傘が置いてあった。 「マスター…忘れ物があったんで、届けて来ます。」 私は慌てて傘を手にし、先程出て行ったばかりのお客さんの後を追った。 「あの!!すみません!!…はぁ…はぁ…傘…お忘れですよ?」 相手の肩を叩き、息を整えてから、持っていた傘を差し出すと、彼はハッとしながら受け取ってくれた。 「…傘?…Σあっ!!…わざわざ持って来てくれたんですか?…ありがとう。」 そう言って微笑んだ彼から、私は目が離せなくなっていた。 (この人…こんなに優しい笑顔で笑うんだ。) 人は一度意識し始めると、自分の意思とは関係無しに、感情が動くらしいι 傘の御礼にと、彼が有名な店のケーキを持って来た時も、私の心臓は口から飛び出すんじゃないかと思うくらい、早鐘を打ち、耳まで真っ赤になって俯く事しか出来なかった。 ……追加で言えば、お皿三枚も割ってマスターに怒られたけどι
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