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それからと言うもの私は、彼が来る時間を楽しみにしていた。
"カランカラン…"
「いらっしゃいませ♪…あ…こんにちは♪」
彼はニッコリ微笑むと、いつものカウンターの席に腰を下ろした。
「…えっと…ブレンド下さい…。」
「かしこまりました。少々お待ち下さい。」
私がオーダーをマスターに告げると、マスターはニッコリ微笑み、珈琲を入れた。
「あやめちゃん…これ新作のケーキ出来たから、味見しといて。…あとユウにも出してくれる?」
(ユウ…?)
疑問付の付いた脳内に、マスターは耳元で呟いた。
「カウンターの端に居るヤツ。あやめちゃんも横で食べておいで♪」
マスターはそう言って肘で突いて来た。
私は二人分のケーキと珈琲と、私が飲む分の紅茶をトレイに乗せ、緊張しながら彼へと近づいた。
「お待たせしました。ブレンドです。…あと…あの…マι…マスターからケーキを…ι」
たどたどしく発した言葉に、彼は一瞬マスターを見てから、横に置いてあったノートを退けてくれた。
ノートには綺麗な文字で【レシピ 藤城ゆず季】と書いてあった。
(もしかして…彼女のノートなのかな?)
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