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私は切なくなる感情を押し込め、隣の席に腰を下ろした。
「どうだ?新作のケーキは?」
一口食べると、口の中に華やかな香りと、苺の甘酸っぱさが広がった。
「美味しい♪」
「…相変わらず見事なケーキですね。見た目も味も。」
マスターはにんまり笑った。
「だろ?俺が作ったんだから♪…例えるならテーマは『初恋』かな?」
(Σは…『初恋』?!ιマスターが言うと違和感が…ι)
マスターはそう言うと皿を洗い始めた。
私が席を立とうとすると、マスターに『たまにはゆっくりして』と言われ、彼とも何一つ話せないまま、また席に着いていた。
「あ…あの…」
「Σは…Σはいっ!」
話し掛けてくれた彼に、私は緊張したまま、ジッと見つめ続けた。
「こうやって話すのは初めてですね。…僕は藤城ゆず季って言います。」
(じゃああのノートは……彼の?)
私は慌てて自己紹介をした。
「私は香坂あやめです…/////……藤城さんはブレンドお好きなんですね♪」
そう言った後で、彼の顔がほんのりと赤く染まった。
「覚えられるくらい頼んでいたんですねι…ここのブレンドが1番美味しくて…つい」
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